うなぎ 

うなぎは特別な時しか食べない。

そのせいか、逆にうなぎを食べると、特別なお祝いなどなくても、格段にスペシャルな時になる。

うなぎのあのふんわりほわほわ脂ののった触感は、人を幸せにする。

そして、食べる前から、ただよってくる、ちょっと香ばしく焼いた甘い醤油の香り、誇張じゃなく、それだけで白いごはんが食べられる。実際、そのにおいをつまみに日本酒をいただいた。そしてしっかり焼き目のついた肝焼き(日本酒に合う)と、ほどよく漬かって辛すぎないキュウリのぬか漬けとほんのり甘みのある大根のお漬物。そしてかすかに柚子の香が香るだし汁がおいしい肝吸い。ごはんとうなぎ、そして肝吸い、ご飯とうなぎ、そして日本酒、ごはんとうなぎ、そしてお漬物、そこに肝焼きをはさみながら、一口一口味わいながら繰り返す。おいしいね、おいしいよ。うなぎのおいしさの6割は触感、4割がタレのおいしさだと思う。脂ののったうなぎには山椒も欠かせない。

そして、とうとう最後の一口。食べてしまうのを惜しみつつ、パクっと一口。最後のお漬物をいただき、肝吸いを飲み干し、ごちそうさまでした。ああ、おいしかった。がんばろう!という気持ちになる。平日のうなぎは、より贅沢に感じられる。しかもゆったりした個室でいただいたので、しばし旅館に来た気分にも。

うなぎを最初に食べてみた人にも、ご飯に乗せた平賀源内にも感謝。